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壮大過ぎて何も言えません。私ごときがレビューは書けないな、と思ってしまうほど壮大で切ない物語でした。

浅田次郎が描いた中国の歴史。ほぼフィクションだけど実際の話でもある、とのこと。つまり、史実を物語で脚色している。

登場人物が多すぎて覚えるのが大変。そして、前作の「蒼穹の昴」とか「珍妃の井戸」がか話の伏線にもなっているので、これらを読んでおかないと、この人誰?って事にもなる。

そして何がすごいって登場人物が本当に個性豊かに描かれている。

最初のうちは「この人悪い奴だな」と思っている人が意外とそうでもなかったりもする。

西大后は悪名高いが実は本当に祖国を守るためにあえてその悪名を着てでも守っていった。

途中から話の中心になってくる袁世凱も、最後まで悪い軍人にも思えたがそれも外国の国から中国を守るために帝政を引き、国民にボロカス言われて失脚。その失脚まで自分の天命に入っていて全うしている。

外国から来ているマスメディアも粋な人間が多い。

馬賊の張作霖はシンプルにかっこいい。「神でも仏でもねえ。俺は張作霖だ。」とか言って人を殺しまくっているが、義に厚く、貧しい人を助けている。

最後まで西大后に仕えていた宦官の春雲は西大后の意思を受け、張作霖と国を守るために国を亡ぼすことを画策する。

なんていうか、義の心、とでもいうのでしょうか。皆国の為。誰かの為に動いている。

その心が伝わってきて切なくなってしまう。私欲とかがない。だから美しくも感じてしまうのだと思う。

 

歴史は繰り返す、と言いますが、本書の中でも、明から清に移る時に同じようなムーブメントがあった。

そして清から中華民国へ。

時代の隔たりは1000年程あるけど、同じような事が起きている。

読んでみて改めて中国の歴史って全然知らないのね、と痛感。

でも、歴史から学ぶことは大きい。

読破するのに恐ろしく時間がかかりましたが読む価値は大いにありました。

(ちなみに続編がまだあるとのこと・・・)

日中戦争の時に、中国国内で起きた事件を、軍付きの記者が調査する、という話。

記者と書いたが本当は探偵小説家。(売れっ子)

当然軍の検閲の元に記事は公開されるので、都合の悪い事実を書いても没になるし、むしろ事実はどう在れ読者が楽しめるように創作しなはれ、ということでもある。

事件自体の異様さももあるけれど、どちらかというと日本軍の中の人間模様だったり、軍規の異様さに読んでいて気を取られてしまう。

日中戦争は前半日本は勝利を重ね中国内地まで進出し、管理地を増やしていった。

その管理地で起きた事件だけど、実情を見てみるとどうみても管理出来ていないし、少なくとも内地に進行しても中国の国力を削ぐことはできていない。

改めて無謀な戦争を仕掛けてしまったのね、と思わざるを得ない。

そしてそこに赤紙一枚で連れてこられる国民のやるせなさ。

当時は戦争は正義であり、軍も正義。言う事聞かないといけないような空気だったのだと思うけど、人権も何もあったもんじゃない。

でも、現実今でもそんな国が世界中には存在しているのね、と思うと切なくもなってくる。

民族や宗教の違いで世界は中々平和にならないし、個人的には戦争はなくならないんだろうなと、寂しく思っているけど、でも、誰も幸せにならない。軍需産業や一部の権力者だけが満足する戦争はなくなればいいのに。

昔、高速道路で渋滞が起きるのが不思議だった。車全部が同じスピードで走れば渋滞は起きないはずとか思っていたけど、そもそもそれが無理だから渋滞が起きる。

世界の皆が戦争なくなればいいと思えばなくなりそうだけど、そうじゃない人が居る限りゼロにはならないのね。

「悲しいけど、これ、戦争なのよ。」(スレッガー中尉)