【読了】『傲慢と善良』
2019.06.09
会社を経営しているイケメン社長の架(かける)と前橋出身の箱入り娘の真美は婚活で知り合った。
そんな真美がストーカーに狙われる。
心配になったかけるは同棲を申し出てそのまま婚約、結婚。みたいな流れ。
でも、実はそのストーカー騒ぎが嘘だった、というオチもあり。
でも実は2人のストーリーはあまり色濃く書かれていなくて、話の中心は真美の両親とかけるの女友達。
言い方悪いかもしれませんが、かけるは東京の有名私立大学を出て家業を継いで社長。
イケメンだったこともあり昔からもてる。女友達も多い。その辺に手を出さないのは彼がまじめだから。ま、派手な生活が似合う人。
真美は引っ込み思案で一人でものを決めれなくて母親と共依存?というくらい親離れも子離れもできていない。そして田舎の小さな世界ですべてが完結している。
その描写が結構しつこいのだが、田舎に住んでいるとその中で人生が完結していく。
そうすると何が起きるか?不都合な事実や情報は全ていいように書き換えられていく。記憶が。
例えば公立の高校に行きたかったが偏差値的に無理だから地元の私立高校に進学した。
という事実も、あの私立高校は伝統ある老舗で中々いけないのよ。選んでいったのよ。と事実が書き換えられていく。
いや。事実は進学した、ということだけなのだがその背景や感情は書き換え自由。
そしてそれを言い続けるからいつしかそれが事実になっていく。
「真美は一人で決められないのだから」と母は言うが、実際は真美が母が決めたそうだから譲っているだけだったりもする。
勿論田舎が全てそうではないし、この家庭の特色ともいえる。
でも、怖いな、と思ったのは親は知らぬ間に子供の人生をコントロールしようとしてしまう。
下手したら結婚相手も親が連れてくる、なんてこともざらだったりする。
私の両親は非常に厳しくて、文武両道は当たり前。両方で一番になれとずっと言われていました。
そして実際一番にはなれず。
でも、親が希望する進学校に進学。(これは私の希望でもあった)
親からは国立理系に行け、と言われ続けその通り高校2年生まで理系で受験するつもりだったが、どうしても数学と物理がついていけなくて離脱。(というか、致命的ですよね)
ならせめて国立文系に行けと言われるが、何しろ勉強していなかったので受かるわけがない。
結果浪人。そして親には言わずに私立文系にスイッチ。結果まさかの京都の大学のみ合格。
その時親の言ったことは忘れられません。
「姉貴と違ってお前は金がかかる・・・」
勿論学費を出していただけたことには感謝です。
でも、私は常に出来の良い姉と比較され続けて生きてきました。
いつも言われていたんですよね。「姉と違って」って。
たまたま京都に一人暮らしが始まり、私の世界は一気に広がりました。
自由と責任を謳歌し、何よりも自分で考えて選択する。ということが身についた大学時代でした。
でもあのまま実家にいたらどうなっただろうと考えるとちょっと怖い。
それくらいうちの親のコントロールはすごかったです。
この真美も正に同じ。
それが33年も続いたわけです。
そうするとどうなったか?
他責になっているんです。
上手くいかないのはあの人のせい。
下手したら親のせい。
何故なら、自分で決めようとしないから。
真美は幸運なことに主体性の塊のようなかけるに会えたことで少しずつ世間と自分とのバランスを取り始める。気づくんですね。自分ってもしかして依存的?って。
そう考えると出会いって大事だな。
真美の良かったところは一生懸命かけるを好きでいたところ。
これだけはきちんと自分で選択していた。
だからそこから変化が生まれたのだと思います。
変化を待つのではなく起こす人間になる。
そのためにはまず、自分から。
インサイドアウト。
そんなコヴィー博士の教えがよみがえってきました。