【読了レビュー】『人事変革ストーリー』
2024.04.15
人事のプロとして生きてきた著者が、ご自身の経験から「個が活きる組織とは」について語っている本。
かなり色々な成果を出されている方なので、うがった見方をすると「自慢?」とも捉える人も出てきそうだが、実際に著者がされてきたことそのものは、戦略人事の原理原則に沿った、王道の人事だと感じました。
内資、外資両方のキャリアを持つ著者ですが、一貫しているメッセージは「人が育たないと事業も組織も育たない」。「人材育成は最重要テーマ」。「経営戦略を実現するための人事戦略」。という3つ。
個々に関しては同意しかないし、私もそのつもりで人事に関わってきました。ただ、これらを本当に組織全体で動かそうとしている経営トップの覚悟と、それを理解している幹部や社員の腹くくりっぷりが本当にすごいな、と。
HR業界では時流に沿って流行るキーワードがある。
今で言うと、エンゲージメントとか、人的資本経営とかタレントマネジメント等。
それらはあくまでも手段でしかなく、本来の目的は前述の3つを実現する為の手段だったり、1つの結果指標に過ぎない。
あくまで経営理念や事業の目的、経営戦略が上位概念にあって、それらを実現する為のビジョンや中期軽々計画があって、社員一人一人に求められる行動規範があり、その実現を支援するための評価制度や教育制度がある。
それらを明確に言語化し、日々マネジメントの中で浸透させ、その実現にすべてのエネルギーをリーダーは注いでいくからこそ、行動規範が組織風土となり、継続的に良い仕事を実現する基盤となる。
という会社を作るのが人事の仕事なのだと思うし、著者がそれぞれの会社でやってきたことは正にそこ。改めて経営トップと人事が一体にならないと組織風土は創れないのね、と実感しました。
一番興味深かったのが人事リーダーの要件。
Be Authentic⇒自分らしくある事
Have Fun⇒楽しく挑戦していこう
Look Forward⇒将来に支店を飛ばしてポジティブに考えること
Leverage Potential⇒自分や周囲の人たちが持つ可能性を開花させようとすること
という4つのマインド。
組織に属して働いている全ての人が持っている意欲や課題に、平常心を保ちながらフェアに向き合い、その想いを聞き取って形にしていくことが人事の仕事。
だからこそ自分の軸を持ち、ポジティブに楽観的に、人間の能力を信じ、仕事そのものを楽しむ事。
それを体現していくことも組織の中では大きな影響力となります。
人事は人ごと。まずは人間に関心を持つことからなのかもしれませんね。