【読了】『留魂録』
2023.11.08
これはじっくり読み応えありました。
死生観、というキーワードがなんとなく引っかかっていたので購入しました。
死生観ってそもそもなんなのか?これすらぼんやりとしか理解していない状態で読了。
一言で言うと、死生観とは「生き様」だな、と。
吉田松陰は色々な罪で30歳で処刑されています。
簡単に言うと幕府からは危険な思想を広める人物という認識をされ、何度も牢獄に入れられます。
ただ、松陰の思想が危険かというと勿論そういうわけではない。
日本を正しく導くために、が常にベースにあるし、別に侵略しようとか幕府を倒そうとか、天皇がえらいとか関係ない。
彼がいつも考えているのは、日本の安全だけ。
そして当時はそれが尊王攘夷がベストだと思ったからそれを説いたが、結果幕府から目をつけられてしまう。
でも彼の死後、松下村塾出身者が明治維新を支えたことを鑑みると、その思想は正しかったし受け継がれていることも分かります。
何度も牢に入れられる松陰ですが、死期が近づくほど、なんていうか、思想がシンプルになっていくんですよね。処刑を恐れることなく受け入れている。
そして自分の思想が少しずつ弟子にも受け継がれ消えていない事も感じている。
そんな安らかな死だったように本書からは感じました。
おそらく自分のなすべきことを全うした、という充実感も大きかったんだろ思います。
どの様に生きるのか?
何に魂を燃やすのか?
その生き様こそが死生観。
勿論今の世の中で何かに魂を燃やす、という言葉は違和感もあるかもしれません。
でも、自分が何によって覚えていて欲しいのか?
周りの人や家族に、どんな人間だったと語られたいのか?
それこそが人生の目的でもあるし、自分の生き様なんだと思います。
本書の最後に出てくる言葉が印象的でした。
「善い人になりなさい」という教え。
偉い人ではありません。勿論金持ちでも成功者でもない。
ただ、「善い人」。
学問は善い人とは何かを学ぶ場であり、人生はそれを実践する場である、という松陰の言葉は奥深い。
でも、100点満点になることはないと思うし、人間は未熟な生き物だと思っています。
でも、そこに向かおうとする姿勢こそが誠実さであり、それが善い人なんだとも思います。