★3.5
著者が書いているように会社員としてどのように不祥事や経営事件が起きてしまったのか。
私もコンプライアンス研修をしていますが、その悪いお手本のような不祥事の顛末がいくつか紹介されています。
物語性を重視しているせいか、どちらかというと「やってしまった」人たちの意識の低さや恣意性がクローズアップされているが、コンプライアンスで一番大事なことは「させない環境作り」です。
ただ、紹介されている事件の主役は経営者なのでちょっとそれも難しいかもしれません。
周りの役員たちが「まずいですよ」と実際進言もしているのに、「会社を守るにはこうするしかない」と言って走ってしまう経営者。
そう考えるとやはり経営者の健全性って大事です。
本書を読んでいてつくづく思ったのは、お金が絡むと何かがある、ということ。
税金逃れのための脱税もそうですし、負債隠しも同様。
改めて客観的に事件の顛末をみているとまさしくマネーゲーム。
勘定科目の付け替えや負債飛ばし。
でも、それらは問題の先送りしているだけでしかないし、もちろん公器としての役割を考えると、財務状態は「正しく」公開しないと、そこに投資している株主にうそをつくことになる。
うそつきはダメ。子供のころから世界中で言われている「原則」。
それすら破らせてしまう「お金」ってやはり怖いと思います。
バブル崩壊のタイミングで色々な不祥事が起きました。
山一証券の破綻やオリンパスの負債隠しなど。
でも、それは何かの選択で生み出してしまった損失をどうやって隠そうか?ごまかそうか?
そして会社法の目をどうやってかいくぐってごまかすか?
冷静に考えれば何の解決にもならないし、リスクしかない。
でも、その判断が出来なくなってしまうのもお金の怖さでもあり、会社のために、という大義名分のパワーでもある。
経営者の在り方。生き様が会社を左右する。
そんな悪い事例を学ぶには分かりやすくてちょうどよい本です。